嫁はエメラルドのリングが欲しいと言う。以前ダイヤの指輪が立爪からボロリと落ち紛失してしまった時には「無茶苦茶、腹が立った」。又、碌な事は起きそうも無い予感が過ぎる。エメラルドはダイヤより柔らかい。当然、衝撃にも弱く、傷も入り易い。しかし、本物はダイヤ以上に高級とも言える。私は取り合えずWebでエメラルドを勉強した。相手はこちらが知らないと見ると自分の都合の良い様に物事を持って行く。すなわち、安物を高価で買わされるだけなのだ。物事、徹底的に行う?、凝り性?の性格から店舗を回りまくった。まるで営業時代を思い出したほどだった。
最初、手短な所で梅田の百貨店ジュエリー店舗を回った。しかし、ダイヤばかりでエメラルドは鼻くそみたいな小粒で二十歳ぐらいの女の子がつける5~6万の物しかない。店員との会話でエメラルドは宝飾店にある事が分かった。結果、梅田では三つの百貨店(HK、HS、DM)のジュエリー、宝飾店。一箇所(WN)の宝飾店の計7店舗を回った。自然と目は肥えて来た。元々、物事目利きの私がシロウトながら下した判別法は色が浅いか、濃いか、深みはどうか。輝きが有るか無いかで組み合わされている(プロが聞けば笑われるであろうが)。色が浅くて輝きが無いのが最悪、濃くても輝きが無いのもアウト。輝きがあり綺麗だが色が浅いのはウン十万円だが、これが一般的レベル。良い物は深い色合いながら輝きを放つ。大きいほど高いのは当然。
最初HKのジュエリー店にオーダーすべく話をしたが0.5カラット位の石を「3.0カラット15000円です」と差し出して来た。エメラルドの良い石ならば0.5カラットでも安くて15~20万はかかる(リング抜き)。無茶苦茶、可愛い女の子だったが私のHKに対する信用は無くなった。年齢的に今やいくら美人や可愛くても中身が伴っていなければ魅力を感じないのは当然だ。HKは宝飾店に行ってもエメラルド・リングは品薄だった。HSは少しマシなだけ。DMの宝飾店は品揃え豊富で石も綺麗だったが、色が浅目で輝くウン十万円の一般的レベルの物が多かった。ここで不信感を抱いたのはウン十万でもウン百万でも石の大きさは違うが、美しさが余り変わらなかった事だ。ダイヤは人間3名の鑑定士による上限2名の意見を採用する鑑別法で4Cと言う品質の明確な基準がある。しかし、エメラルドは本物か偽物かの違いだけで、後は本人の好みだけなのだ。随分、ファジーでデタラメな世界だ。しかし、見れば見るほど明らかに美しさの違いが分かるのも事実だ。「結局、宝石はココが大事なんやね」。知らない奴は確実に馬鹿を見させられる。
宝飾店の殆どセールス・レディは「ダイヤじゃ駄目なの?」、「エメラルドならペンダントでは?」と言う問いかけが共通して多かった。「そんなモン、理由があるから(嫁の希望)リングを指定してるに決まってるやんけ」。「人を何処まで馬鹿だと思っているのか」。人は自分の能力レベルでの範囲でしか他人を見れない。そして、予算より少しでも高目にお勧め品を持って行こうとする。そして、客の石を見る目を見ていて、見る目が無ければ、遠慮なく際限なく石の質を落とし、安物を高価で買わされる羽目になる。セールス・レディの心理、手口は営業true(プロ中のプロ)の私に取っては筒抜けである。私は「コレかな」と言う品をスマホで写真に撮って置き、嫁に見せフランス旅行かエメラルド・リングか選択させた。
しかし、嫁は決めれなかった。・・・私の気持ちが決まっていなかったからか。選んで欲しかったのか。いずれにせよ、いつも通り、私が引っ張って行かないといけない。